
戸籍は日本国民の身分関係を公的に記録した書類で、出生や婚姻、離婚、死亡といった人生の節目ごとに新しく作り替えられてきました。そのため、相続人調査を行うには、現在の戸籍だけでなく、古い戸籍をさかのぼって確認する必要があります。
もっとも、戸籍には独特の用語や表記があり、特に明治・大正期の戸籍は現在の書式と大きく異なるため、正しく読み取るのは容易ではありません。「そんな昔の戸籍なんて関係ない」と思われるかもしれませんが、実際には出生から遡って明治期まで収集しなければならないことも、令和の時代になっても珍しくないのです。
この記事では、平成6年式から昭和・大正・明治の戸籍まで、それぞれの特徴や読み方を解説します。これにより戸籍への理解を深め、相続人調査の参考としていただけます。
- 戸籍制度は、法令の改正により5回にわたって形式が見直された。
- 戸籍には「現在戸籍」「除籍戸籍」「改製原戸籍」の3種類がある。
- 平成6年式戸籍のポイント
- 昭和23年式戸籍のポイント
📜近現代戸籍の変遷

明治時代に日本で初めて戸籍制度が始まり、その後も法令の改正により5回にわたって形式が見直され、現在の戸籍につながっています。戸籍には、日本国民の出生、親子関係、結婚、離婚、死亡といった人生の重要な事実がすべて記録されています。世代ごとに戸籍の形式や表記方法が異なるため、読み方にも違いがあります。現在は、明治19年式戸籍までさかのぼって取得することが可能です。
🗂️戸籍の種類とその関係 ― 現在戸籍・除籍戸籍・改製原戸籍
戸籍は「閉鎖されても保存される」
日本の戸籍制度では、一度効力を持った戸籍が閉鎖されても廃棄されず、必ず保存されます。閉鎖の原因はさまざまですが、その都度、新しい戸籍が作られる仕組みになっています。ただし、戸籍内の全員が死亡してしまった場合などには、新しい戸籍は作られません。
この「新しい戸籍を作ること」を編製(へんせい)といいます。
なお、新戸籍が作られたからといって、それまでの戸籍の情報が新しい戸籍に引き継がれるわけではありません。
そのため、相続人を確定したり親族関係を証明したりするには、被相続人について出生から死亡までのすべての戸籍を確認する必要があります。
現在戸籍
現在戸籍とは、その人の現時点の身分関係が記録されている戸籍を指します。
いわば「生きている戸籍」です。現行法では、夫婦とその氏を同じくする子を単位として戸籍が編製されます。
・婚姻すると、それまでの戸籍から除かれ、新しい戸籍が編製されます。
・転籍する場合も、従前の戸籍が閉鎖され、新しい戸籍が編製されます。
新しい戸籍が編製され、その時点で最新の戸籍を「現在戸籍」といい、現在効力を持つ戸籍となります

除籍戸籍
「除籍戸籍」とは、戸籍に記載されていた人が全員、死亡・婚姻・転籍などで戸籍から抜けてしまい、誰も残らなくなったために閉鎖された戸籍をいいます。
閉鎖され、効力は失っても、その戸籍は「除籍戸籍」として保存され、過去の身分関係を確認できる資料となります。

改製原戸籍
戸籍制度の改正により戸籍の様式が変更されると、それまで使用されていた古い戸籍は閉鎖され、保存されます。この閉鎖された戸籍を「改製原戸籍(原戸籍)」といいます。制度改正があっても、直ちにすべての戸籍が一斉に置き換わるわけではありません。自治体の事務処理の進行や、婚姻・転籍などの記載事項の変更があったときに、旧戸籍が閉鎖され、新しい戸籍が作られます。
このように、制度改正に伴って新しい戸籍が作られることを改製(かいせい)といいます。

3つの戸籍の関係
・現在戸籍:効力を持つ最新の戸籍
・除籍戸籍:戸籍内の人が全員いなくなって閉鎖された戸籍
・改製原戸籍:制度改正により閉鎖された戸籍
いずれも「過去の経緯を保存する」という役割を持ち、相続や家族の歴史を確認するために不可欠な書類です。
戸籍が「新しく作られる」主な原因
婚姻:新しい戸籍が編製される。
離婚:親の戸籍に復籍するか、親の戸籍に復籍せず新たに戸籍を編製して入籍するかを選択することができます。
転籍:本籍を変更したときに新戸籍が編製される。
戸籍法の改正:戸籍制度の改正により様式が変わったとき。

【補足:編製と改製の違い】
編製:婚姻・離婚・転籍など、個々人の事情によって新しい戸籍が作られること。
改製:戸籍制度そのものが改正され、様式の変更に伴って新しい戸籍が作られること。
💻平成6年式戸籍のポイント
導入目的:戸籍の電算化(コンピュータ処理)を全国的に進めるため、新しい様式(平成6年式)が設けられた。
様式の変更:従来の縦書き・冊子形式から、A4判の横書き様式に変更。
証明書の名称変更:
従来 → 「戸籍謄本」「戸籍抄本」
平成6年式 → 「全部事項証明書」「個人事項証明書」
全国導入完了:令和2年、すべての自治体で電算化による戸籍管理が実現した。
現行戸籍:現在発行される戸籍はすべて、この平成6年式様式に基づいている。
戸籍謄本(こせきとうほん)
戸籍に記載されたすべての事項をそのまま写した公的な証明書で、戸籍に記載されている全員の情報が含まれます。
戸籍抄本(こせきしょうほん)
戸籍に記載された事項のうち、請求した本人またはその一部の人の情報だけを抜き出して写した公的な証明書です。
この戸籍でわかること
・この戸籍の筆頭者は三浦勝次である。(①)
・勝次は、この戸籍が改製された以前に死亡し、除籍になっているため、この戸籍には死亡の事実が記載されていない。以前の戸籍に記載されているはずである。(④)
・武の「戸籍に記載されている者欄」と「身分事項欄」。現在は未婚で、生存している。この戸籍が改製された以前に婚姻し、離婚した可能性もある。この戸籍は武の現在戸籍である。(⑤)
・妙子の「戸籍に記載されている者欄」と「身分事項欄」。⑦に除籍の印、⑧死亡の記録。未婚だが、この戸籍が改製された以前に婚姻し、離婚した可能性もある。この戸籍の効力がある間に死亡している。(⑥)
・証明日(令和5年6月4日)(⑨)
・妙子は令和5年4月4日に死亡しており、この戸籍上では配偶者も子も確認できないが、子がいなかったとは断定できない。
家族関係
筆頭者:三浦勝次
二男:三浦武
長女:三浦妙子
三浦武と三浦妙子の母は三浦とよだとわかるが、この戸籍ではこれ以上は分からない。
この戸籍が効力を有していた期間
・平成20年8月2日に改製された戸籍(②)
・戸籍事項欄には「戸籍改製」のみが記載されているため、改製後に新たな変動はなく、現在まで効力を有していろことになる。(③)
(ただし、証明日時点まで効力が存続していたことの証明になる。)
※例えば、戸籍が改製され、その後閉鎖されたときには、「戸籍改製」に続いて「戸籍消除」が登録される。
「戸籍改製」が原因の戸籍なので、ひとつ前の戸籍は、同本籍地の改製原戸籍となる。
この戸籍の効力を有していた期間は、平成20年8月2日~現在(証明日)まで。
戸籍事項欄について
戸籍謄本などにある「戸籍事項欄」は、その戸籍自体の状態や変動の理由を記載する欄です。
今回の「戸籍改製」は、この戸籍が戸籍制度の改正により、新しく作られた戸籍ということを示しています。
「戸籍編製」と記載の場合は、婚姻などで編製された戸籍を意味します。
「転籍」と記載の場合は、転籍で編製されたことを意味します。
上記編製理由と併せて「戸籍消除」と記載の場合は、除籍(つまり閉鎖)となったことを意味します。
この戸籍の従前の戸籍は、同じ本籍地、同じ筆頭者の「改製原戸籍」だと分かります。
📖昭和23年式戸籍のポイント
導入背景:戦後の新憲法施行に伴い、民法と戸籍法が大幅に改正された。
戸籍の単位:従来の「家」を基本単位とする戸籍から、「夫婦」を基本単位とする戸籍に変更。
用語の変更:
「戸主」が廃止され、「筆頭者」に。
華族・士族・平民などの身分事項の記載も廃止。
戸籍の扱いの変更:大正4年式までは戸主死亡や隠居が原因で新戸籍が編製されたが、昭和23年式からは筆頭者が死亡しても新しい戸籍は作られず、亡くなった場合でも筆頭者のまま残る。
改製時期:大幅な制度改正であったため、実際に戸籍簿が改製されたのは昭和32年頃から昭和40年頃にかけて。
従前戸籍の扱い:施行後すぐに一斉改製はできなかったため、「旧戸籍も改製までの10年間は新戸籍とみなす」とされた。その後、順次改製を実施。
改製時の表示:古い戸籍には「昭和32年法務省令第27号により昭和○年○月○日新戸籍編製のため削除」と記載し、欄外に「改製原戸籍」と表示して新旧を区別した。
この戸籍でわかること
・この戸籍は、改製原戸籍として閉鎖された戸籍です。(①)
・筆頭者は三浦勝次です。(②)
・昭和30年11月11日、「北海道夕張市町域1番地2」から転籍によって編製された。(④)
・昭和61年6月6日、市区町村内で本籍地を変更しています(⑤)。この場合は新しい戸籍を編製されず、本籍地欄を訂正することで対応しています。(⑥)
・勝次の身分事項欄には、出生、婚姻、死亡の事実が記録されています。(⑦)
・とよの身分事項欄にも、出生、婚姻、死亡の事実が記録されています。(⑧)
・義雄の身分事項欄には、婚姻によって除籍となったことが記録されており、新しい本籍地も記載されています。(⑨)
・除籍となった者の氏名は、名前の上に「×」印を付して抹消されます。この戸籍では、勝次・とよ・義雄が除籍となっています。(⑩)
・武の身分事項欄には、昭和11年2月2日に出生したことが記録されています。(⑪)
・妙子の身分事項欄には、昭和15年3月3日に出生したことが記録されています。(⑫)
※この戸籍は昭和30年11月11日に編製(④)されたものなので、それ以前の記録は含まれていません。それ以前の記録を確認するためには、さらに前の戸籍まで遡る必要があります。
家族関係
筆頭者:三浦勝次
妻:三浦とよ
長男:三浦義男
二男:三浦武
長女:三浦妙子
この戸籍が効力を有していた期間
編製日昭和30年11月11日(④)、消除日平成20年8月2日(①)
この戸籍が効力を有していた期間は、昭和30年11月11日~平成20年8月2日まで。閉鎖後は改製原戸籍として保存されている。
この前の戸籍は
この戸籍の前にあたる戸籍は、「戸籍事項欄」から確認できます(③)。 「戸籍事項欄」は、その戸籍の状態や変動の理由を記載する欄です。
そこからこの前の本籍地は「北海道夕張市町域壱番地弐」だということが分かります。
なお、この戸籍の編製原因は「転籍」であるため、筆頭者はこの戸籍と同じく「三浦勝次」です。
- 戸籍制度は、法令の改正により5回にわたって形式が見直された。
- 戸籍には「現在戸籍」「除籍戸籍」「改製原戸籍」の3種類がある。
- 平成6年式戸籍のポイント
- 昭和23年式戸籍のポイント
新井 秀之
行政書士/認定経営革新等支援機関/東京出入国在留管理局申請取次者/神奈川県行政書士会横浜中央支部相談員/コスモス成年後見サポートセンター相談委員
- 対応エリア:
- 神奈川県横浜市
- アクセス:
- 相鉄線 天王町駅 北口より徒歩10分
- 対応業務:
- 相続/遺言/遺言執行/成年後見/終活
この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な手続きや判断については、必ず専門家にご相談ください。法改正や自治体の運用により情報が異なる場合がありますのでご注意ください。



























1965年に横浜市神奈川区で生まれ、東芝、リクルートでの企業勤務を経て、行政書士として独立いたしました。以来、「人生の最終章を支える」という使命を胸に、相続、遺言、成年後見、そして死後の諸手続きといった業務を中心に、数多くのご相談と向き合ってまいりました。...続きを読む